Classiques japonais avec furigana
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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控 鬼の面
野村 胡堂
Lisez 銭形平次捕物控 鬼の面 (ぜにがたへいじとりものひかえ) de 野村 胡堂 (のむらこどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 130 082 caractères · 257 écrans
野次馬の群をかきわけて、江島屋の裏口近くまで行くと、平次がもう一度驚いたほどの、それは不思議な殺しでした。
「成程こいつは、江戸開府以来だ」
金沢町は言うまでもなく、神田から下谷へかけて、五本の指に折られた大地主、江島屋の構えは町人にしては贅に過ぎるほどで、四方にめぐらした板塀の厳重さ、その上に植えた忍び返しは、天に向って振り立てた、無気味な武器にも似て、僭上の限りです。
その裏口の切戸近く、鑓のように突っ立った忍び返しの上に、若くて丈夫そうな男が一人、手拭の頬冠り、縞物の渋い袷を着たのが、ほとんど逆さ大の字になった形に、胸から腰のあたりを引っ掛けて死んでいるではありませんか。
八五郎がこれを『百舌の贄』と言ったのは、適切過ぎるほど適切な譬えでした。大の人間が一人、こんな格好になって死ぬためには、天狗の悪戯か、雲を踏み外した仙人か――そんな途方もないことでも考えなければなりません。
「八、手を貸せ――いや、二人じゃ六つかしいだろう、梯子を二、三挺、四人位の人手が要るが」
「待って下さい親分」
八五郎はその用意に何処かへ飛んで行きました。
その間に平次は、江島屋の庭から掛けた九つ梯子を登って、死骸の側まで行くと、下から、上から、横から、念入に調べ始めたことは言うまでもありません。