Classiques japonais avec furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(三)
吉川 英治
Lisez 鳴門秘帖(三) (なるとひちょう) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 261 216 caractères · 521 écrans
太いともづながうねうねと波を切って艫へ手繰り上げられているのが大蛇のように見えた。
「ああ……」
お久良が重荷を下ろしたように深い吐息をもらした。ともかくも、ここまで運んだというホッとした気持がいッぺんにこの間からの気疲れを覚えさせた。そして、心の中で合掌をくんだ。
「どうぞ無事に彼岸まで、あのつづらが……」
いつの間にか、送りの灯は思い思いに帰っていた。お久良は吾を忘れたように船の影について岸を歩いている自身に気がついた。
そしてその足もとへ、誰かぶつかった者があるので、初めてオヤと我に返って見ると、姉弟の稚いものが手をつないでシクシクと泣いている……。
「誰か、船へ乗った人を、送りに来たのかえ?」
お久良がそう訊ねてみても姉弟はかぶりを振っているだけだった。
「どこから来たの、お前方は」
「江戸から……」
「えっ、江戸からだって、まあ。そして何でこんな所に泣いているのだえ? 連れの人にでもはぐれたのかえ? エ、そうなの」
姉弟は泣きながらうなずいた。
するとそこへ、闇を探しながら駆けてきた侍があった。あの編笠の浪人である。
「オオ、ここにいたか!」と子供たちの側へ来て両手に抱きこむと、姉弟も嬉しそうにすがりついた。