Classiques japonais avec furigana
ja-reading.com
Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
なるとひちょう
鳴門秘帖(三)
吉川 英治
Lisez 鳴門秘帖(三) (なるとひちょう) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 261 216 caractères · 521 écrans
「そうさな」
冷然と、高台寺の黒い峰の背を指さして、
「あの山の向う側だと思えばいい」
「そこの普化宗の僧院にまいれば、あの……弦之丞様が私を待っておいで遊ばすのでございますね?」
「弦之丞?」
突然、その虚無僧、クックッと妙な笑いをこみあげて、
「なるほど、あいつが深い執心だけあって、お千絵様はまるで初心だ。これじゃ、策にのせても一向騙し甲斐がねえな」
みはっている純な眼は、何を嘲られているのか、解せないふうだった。
怪しげな虚無僧姿の男、やがて、白ばッくれた調子で言い放した。
「ナニ、僧院へ行けば弦之丞がいるかって? 誰がそんなことをいったい? 弦之丞なんてやつが今頃そこらにいてたまるものか」
「ええッ」
お千絵は水をかけられたようにすくんだ。
騙された!
そう知って逃げ退こうとした時は、もう自分の腕くびが、固く対手につかまれていた。
「第一、山科に虚無僧寺なんてあったかい? おめえはほんとに、可愛らしいお人形様だ」
「じゃあ……そなたは……」必死に男の指を一本一本もごうとして悶えながら、
「さっき、弦之丞様に頼まれて来たといやったのは、この身を、誘いだす虚言であったのか」