Classiques japonais avec furigana
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あるはいまつのどくはく
ある偃松の独白
中村 清太郎
Lisez ある偃松の独白 (あるはいまつのどくはく) de 中村 清太郎 (なかむらせいたろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 132 905 caractères · 262 écrans
北西に峯を負い、南東の陽気をまともにうける、絶好の位置で、俺はのびのびと、大の字になって育って行った。ところが成長するにつれて、前に言った通り、雪崩のおそろしさが、だんだんとわかってきた。それはいつも大抵、南に向いた俺の左脇をかすめて、三度に一度はひどく痛めつけられるのが例なので、俺はしぜん右手の、この大きな立ち岩さんの方へ、身を寄せかけるようになった。それでも左手の、伏せ岩さんの平らな背中が、ホカホカ温かくて、いかにも具合がいいものだから、つい又うかうか、そっちへ手足がのびる……。
するとある年、いやに春雪が深いと思ったら、案の条、いつにない猛烈な雪崩を食って、左半身、肩から腰まで、骨が露出するほど、皮肉を剥ぎとられてしまった。若いから助かったようなものの、これにこりて、以後はもっぱら、右手の立ち岩さんを頼んで、その切っ立ての胴中の方へ、身体を伸ばさせてもらうことになった。
こうすれば、さすがの雪崩魔王も、大岩さんをこづいた拍子に、俺の頭をはね越えて行くので、大へん助かる。そのかわり眼の前は、巨岩と巨岩の狭間が、ガックリ大口を開けているから、いきおい俺の体躯は、半ば以上宙に浮いて……ごらんのごとく、危なっかしい懸垂状態にならざるを得ない。