Classiques japonais avec furigana
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さぶ
さぶ
山本 周五郎
Lisez さぶ de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 210 521 caractères · 415 écrans
まっ暗な道で、どこだか見当もつかなかった。右手に堀か川があるのだろう、ときどき岸を洗う波の音が聞え、さして強くはないが風が吹いていた。
「門前仲町とかいってたから、ここは木場のあたりかもしれねえな」と彼は呟いた、「――暗い、まっ暗だ、どっちへ向いてもなんにも見えやしねえ、人間の住む世界じゃあねえみてえだ」
空には雲があり、雲のあいだに星がまたたいていた。その星のあるかなきかの明りで、道の左側に材木の積んであるのをみつけ、栄二はそっちへいって、用心ぶかく腰を掛けた。その材木は少し不安定だったが、栄二は足で平均をとって腰をおちつけ、溜息をついた。
「なにがどうなってるのか、なにもかもてんでわからねえ」彼は肱を膝へ突き、手で顎を支えながら首を振った、「いったいなにが起こったんだろう、――古代箔白地金襴、おらあ見たこともありゃあしねえ、そいつがおれの道具袋にはいってた、おれの道具袋に」
そうしてとつぜん彼は泣きだした。顎を支えたままで頭をゆらゆらと振り、すると、涙が両の眼からこぼれ落ちた。嗚咽が喉へこみあげてき、彼は自分のすすり泣く声を聞いた。それは自分の喉から出るのではなく、まるで雨に濡れた宿なし犬が、あまやどりをするところに困って鳴いている声のように聞えた。