Classiques japonais avec furigana
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さんまいつづき
三枚続
泉 鏡花
Lisez 三枚続 (さんまいつづき) de 泉 鏡花 (いずみきょうか) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 63 572 caractères · 124 écrans
「火事だ、」と叫んで、軍鶏を打とうとしたが、打外した。
蔵人は咄嗟に躱して、横なぐれに退ったが、脚を揃えて、背中を持上げるとはたと婆に突かけた。
「火事だ、」
また喚いて件の薪雑棒を振廻す、形相あたかも狂者のごとく、いや、ごとくでない、正に本物である。蓋し小金も溜って、家だけは我物にしたというから、人一倍、むしろ十倍、宵啼に神経を悩まして、六日七日得も寝られず、取り詰めた果が逆上をしたに違いはないので。
白髪は飛んで、翼は乱れた。あれよと見る間に、婆と軍鶏と、とんと当り、颯と分れて、月下にただぐるりぐるりと廻った。
「汝、業畜生、」と激昂の余り三度目の声は皺嗄れて、滅多打に振被った、小手の下へ、恐気もなく玉の顔、夜風に乱るる洗髪の島田を衝と入れて、敵と身体の擦合うばかり、中を割って引懸けにぐいと結んだ帯の背後へ、軍鶏を庇ったのはお夏である。
「お婆さん何をなさるんです。」
ちょいと横顔で振返って、
「叱!」
軍鶏も窘むようであった。婆は恐しい目をしながら、胸に波を打たせて肩で呼吸だ、歯を喰緊めて口が利けず。
かかる処へ殺気を籠めて、どかどかと寄せて来た、お夏と蔵人とを中に、婆の右左へかけて取巻いたのは土蔵の前に居た連中。