Classiques japonais avec furigana
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たんげさぜん
丹下左膳
林 不忘
Lisez 丹下左膳 (たんげさぜん) de 林 不忘 (はやしふぼう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 340 187 caractères · 666 écrans
靄然として暮色の迫るところ。
物置小屋のかげに、つづみの与吉はつばをのんで、蹌踉と椎の老幹に身をささえているお藤のようすを心配げに見あげた。
丹下左膳が弥生という娘を恋している――と聞いたお藤は、さてはッ! と思うと身体じゅうの血が一時に凍って、うつろな眼があらぬ方へ走るのだった……紙のような唇をわなわなとおののかせて。
嫉心鬼心。
それが眼に見えぬほむらとなって、櫛まきお藤の凄艶な立ち姿を蒼白いたそがれのなかに浮き出している。
与吉はわれ知らず面を伏せて、心中に足もとの土へ話しかけた。こいつあとんだことをしたぞ! まさかこんなに相まで変えようとは思わなかったが、ちえッ! 黙っていりゃあよかった……。
と、頭のうえで、夢でもみているような、しらけきったお藤の声がした。
「きれいな娘だろうねえ、その弥生さんとかってのは」
「へ?」と顔を上げた与吉は、とたんに、三斗の冷水を襟元からつぎこまれた感がして、「へえ、なんでもあけぼの小町といわれたくらいですから、それあもう――」
と語尾を濁して黙りこんだ。
仮面のようなお藤の顔が、こわばった笑いにゆがんだのを見て、与吉は慄然としたのだった。