Classiques japonais avec furigana
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たんげさぜん
丹下左膳
林 不忘
Lisez 丹下左膳 (たんげさぜん) de 林 不忘 (はやしふぼう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 340 187 caractères · 666 écrans
しかし、そういえば、このごろおぬし眼立って肥った。やはり徳川の飯はうまいとみえる」
越前はいささかまぶしそうに、
「相変わらず口が悪いな。どこにおるかと案じておったぞ」
「どこにもおりゃせん。と同時に、どこにでもおる。いわば大気じゃな。神韻漂渺として捕捉しがたしじゃ――はははは、いや、こっちは病知らずだが、おぬしその後、肩はどうだ? 依然として凝るか」
「なに、もうよい。さっぱりいたした」
「それは何より」
「互いに達者で重畳」
ふたりはいっしょにぴょこりと頭をさげあって、哄然と上を向いて笑った。
が、泰軒は忠相の鬢に、忠相は泰軒のひげに、初霜に似た白いものをみとめて、何がなしにこころわびしく感じたのであろう。双方ふっと黙りこんで燭台の灯影に眼をそらした。
中間部屋に馬鹿ばなしがはずんでいるらしく、どっと起こる笑い声が遠くの潮騒のように含んで聞こえる。
秋の夜の静寂は、何やら物語を訴うるがごとくその縷々たる烏有のささやきに人はともすれば耳を奪われるのだった。
対座して無言の主客。
一は、いま海内にときめく江戸南町奉行大岡越前守忠相。他は、酒と心中しよか五千石取ろかなんの五千石……とでも言いたい、三界無宿、天下の乞食先生蒲生泰軒。