Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

のぶこ

伸子

宮本 百合子

Lisez 伸子 (のぶこ) de 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 232 543 caractères · 466 écrans

Aozora Bunko

伸子はその間に、自分も着かえをし、さっぱりと髪に刷毛までかけて来た彼と、向い合って、矢車草の大盛花のある客間で、冷たいものを飲んだ。伸子は、簡単に、彼の留守中あったことなどを話した。が、彼女は、その間じゅう、自分が佃に対して変ったものになったという意識で攻められた。もと、二十日も旅行して来た彼を、自分はどんな大喜びで歓迎しただろう。彼女は、喜んで、喋って喋って、うるさいほどつきまとわずにはいられなかった。姿の見えないところから、彼女の声をきいただけで、もう嬉しさで有頂天な伸子の心が見徹せただろうほど、単純で、混りけなかった。今、自分がそうでないのが、伸子自身、よくわかって悲しいほどであった。分裂したようで心が統一して働かず、夫の、親しい者のような、あかの他人のような顔を見ると、安心して可愛がられてよいのか、憎んでよいのか、決心のつかない気まずさに捕われた。佃も同様の感じで、本当の調子になれないのを、伸子は心づいた。奇怪なことに、彼の顔を見ず、窓のそとの青葉でも眺めながら喋ると、話はなだらかにいった。ふと眼がかち合うと、疑いに満ち、相対峙して譲らない二つの心が、稲妻のように閃き、角力おうとするのを、互に鋭く感じる。