Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

えせものがたり

似而非物語

山本 周五郎

Lisez 似而非物語 (えせものがたり) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 31 817 caractères · 64 écrans

Aozora Bunko

狭い谷の向うも山で、谷間にも山にも、前後左右、びっしりと杉が繁っていた。見る限り杉の林だった、そのなかで前庭の榧の樹(木剣を吊った)だけがぬきんでて巨きく、逞しく枝を張っていた。

飯篠老人は去っていった。

「では……」と云って、自然木の杖を突いて、やや皮肉な笑いをうかべ、もういちど、「それでは」と云って、そうして去っていった。

その日の午後、とつぜん黒門のお登女さまがやって来た。山駕籠に乗って、供は老女と下僕二人、それに弥市が先触れを勤めた。お登女さまは三十六七歳であった、躯は小柄でほっそりしているし、顔も手足も小づくりであった。肌は透くように白くて、縹緻もかなりいい。いかにも深窓の佳麗といったふうである。が、ひとたびその表情が動きだすと、印象はがらりと変ってしまう。年齢のためもあるだろうが、眼はきらきらと光り、唇は赤く濡れて神経質にぴくぴくし、甚だしく精悍で肉慾的な感じがあふれるのであった。

「あの杢助、いいえ、あの、飯篠さま」

彼女は縁先へ来て云った。

「さきほどあの御門弟の方からすっかりうかがいました。まあどんなに驚いたことでしょう、わたくし梅尾と双六をしているところでした、ちょうどわたくしの番で、賽を取ろうとしたときあの方がみえたのです」