Classiques japonais avec furigana
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ほうがんさぶろうのしょうたい
判官三郎の正体
野村 胡堂
Lisez 判官三郎の正体 (ほうがんさぶろうのしょうたい) de 野村 胡堂 (のむらこどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 12 587 caractères · 25 écrans
一人は英子嬢、その輝かしく、美しい顔には、微笑をさえ浮べて居ります。もう一人は深山茂、鉄の仮面のように冷たい顔で、例の外国語の髭文字の本に読み耽って居ります。
「英子さん」
暫らくして、静かに外国語の本を閉じた深山茂は、美しくも取すました英子の前へ歩み寄って呼びかけます。
「――――」
黙って男の顔を見上ぐる姫の眼には、媚とも怨とも付かぬ焔がメラメラと燃えます。
「屋上庭園へ通ずる鍵をお出しなさい」
「どうなさるのです」
「お鶴を救わなければなりません」
熱鉄を叩くような言葉、
「あの娘はあなたの何んです」
「愛人」
「エッ、それでは私は」
「路傍の人だ」
これは氷を割ったような言葉です。
「いけません、いけません」
サッと英子の顔は血色を失って、両手で胸を抱いて、身体を揉みます。
「お出しなさい、あの娘はあなたより遥に神聖だ、あれは罪悪と塵埃の中で育った女ではありません、中央山脈の中の、人跡未踏の霊地で育った自然の傑作です」
「コレ、君は娘を侮辱するか、無礼だろう」
猛り立つ男爵を尻目に、
「男爵、怒ってはいけません、猛獣と一緒に一人の娘を屋上庭園へ追い上げる婦人は尊敬に価するでしょうか」