Classiques japonais avec furigana
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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
やまびこおとめ
山彦乙女
山本 周五郎
Lisez 山彦乙女 (やまびこおとめ) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 126 360 caractères · 251 écrans
「あたしそう思いましたの」
彼女のまなざしが、ふいに、うっとりとなり、表情は酔うような、空想のいろに掩われた。そして花世は、彼の悲しい身の上を、語りだすのである。彼は大身の武家の若さまである、もしかすると大名の若殿であるかもしれない。いや、たしかに若殿にちがいない。ところが悪い家来がいて、お家の中が紊れて、彼は危うく毒殺されそうになる。そればかりかひじょうに美しい、町の娘を、彼は夢中になって恋しているが、その娘は自分の卑しい素性を恥じて、彼の熱烈な恋を拒絶する。
「その人は心のなかで泣きながら、本当に身も世もなく泣きながら、いいえ、わたくしのことはお諦め下さいまし、とてもお情けを受けることはできません、とても、……そう云って、顔では笑いながら、いってしまうんです」
花世は、涙ぐみ、両手を握り合せ、耐えかねたように声をふるわせる。
彼は失恋のいたでと、毒殺される危険を避けるために、或る夜そっと、一人で邸を出奔する。彼は絶望し、悲嘆にくれ、世の中も人間もいやになり、そしてこんな山の中へ。……というふうに、自在な空想に、自分で感動しながら、語り続けるのであった。