Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

やまびこおとめ

山彦乙女

山本 周五郎

Lisez 山彦乙女 (やまびこおとめ) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 126 360 caractères · 251 écrans

Aozora Bunko

彼はやや圧倒された。

どこか遠く、ずっと下のほうで、かすかに渓流の音が聞える。そのほかには、なんのもの音もしない。高くあがった月の、青い透明な光りをあびて、重おもしく、森厳にねむっている連峰のなかに、際立って白く、きらめくような感じで、法王山の峰がぬきんでて見えた。

「やっぱり乙女の云ったとおりでしょ」

彼女はうっとりとした声で、こう云いながら半之助を見た。

「まるで雪の宮殿のようでしょ」

半之助は黙って頷いた。彼は坐っている膝を立て、それを両手で抱えながら、魅せられたような眼で、じっと、その山に眺めいった。

「少し寒くなったわ、倚らせて頂いていいでしょ」

花世はこう云いながら、彼のほうへ、そっと身を寄せた。化粧の香りが、あまく、しかし爽やかに、彼を包んだ。

彼には山々が、厳しい死のようにも思え、また不滅の生であるようにも思えた。それは、現象のあらゆる秘密を知っていて、しかも黙って、亡びのときの来るのを、永遠に、辛抱づよく待っているかのようにみえた。

「――五百年、千年のむかしにも、私たちがこうして眺めるように、誰かが、こんなふうに、あの山を眺めたかもしれない」