Classiques japonais avec furigana
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ねんじゅうぎょうじおぼえがき
年中行事覚書
柳田 国男
Lisez 年中行事覚書 (ねんじゅうぎょうじおぼえがき) de 柳田 国男 (やなぎたくにお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 135 005 caractères · 262 écrans
兵庫県但馬の村々などでは、この霜月三夜には山々の獣までが山から出て来て、この晩の祭をするという言い伝えがあり、子供は楽しいというよりもむしろ気味わるく、静かに炬燵にあたって木枯しの音を聴いていた。尊い神様が吹雪の風に乗って、里をお巡りなされるといったのもこの晩の事である。中部地方から東の各県、北陸一帯、または山陰地方も但馬から西の方では、この晩だけは二十三夜とは言わずに、大師講といいまたはその大師の昔話によって、跡隠しとか擂木隠しとか、その他いろいろの珍しい名を以て呼んでいる。
むかしある一人の貧しい老女の家へ、この寒い二十三夜の晩に、戸を敲いて大師が訪ねて来られる。何か食べ物をさし上げたいと思っても、ひどい貧乏なので家には何一つもない。悪い事とは知りつつも、そっと隣家の田に行って、掛稲の穂を五六本盗んで来る。または大根を畠から抜いて還る。大師はその志を憫れんで、雪を降らせてその老女の足跡を隠してやった。その因縁によって今でもこの夜はきっと雪が降るのだとも言い伝えている。暖かい雪の降らぬ土地の生まれでない限り、この話は今でも聴いて覚えている人は多いことと思う。