Classiques japonais avec furigana
ja-reading.com
Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
ふくいんさつじんじけん
復員殺人事件
Lisez 復員殺人事件 (ふくいんさつじんじけん) de Sakaguchi Ango (坂口 安吾) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 96 621 caractères · 195 écrans
「イヤですよ。私はそんな。私は何もしませんよ」
「いゝから、これを指へつけて、おすんだよ」
三村に怒鳴りつけられて、モトは失心しそうな危なさで、ようやく指紋を捺した。
「このヒモは、誰の持ち物だね」
捜査主任は、安彦のクビにまかれたヒモを指した。それはクビの後に、かたく結ばれていた。
モトは見ようともしなかった。
「こら、見ないかね。お前はどこを見ているのだ」
三村は怒鳴りつけておいて、モトの顔をグイとねじまげた。顔はそっちへ向いたが、モトは目をあけなかった。
「こら、目をあけて、ハッキリ見ないか。さもないと、お前が犯人だと思われてしまうぞ」
こう叱られて、よほど強くこたえたらしい。モトは目をあけてヒモを見た。俯伏しているから、見れば、さのみ怖しい情景でもないのである。
「よく見て、誰の物だか、云ってごらん」
「アア」
モトは、うなだれた。
「誰の物だね」
「美津子様の用いていらッしゃる品物です。ふだん和服の時に使っていらッしゃる物ですよ」
「美津子さんは、今日は日中はいなかったんだね」
「ハア、そうです。今日は洋装でおでかけでしたから、この腰ヒモはお用いではありません」