Classiques japonais avec furigana
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うきふね
文豪怪談傑作選・特別篇 鏡花百物語集
泉 鏡花
Lisez 文豪怪談傑作選・特別篇 鏡花百物語集 (うきふね) de 泉 鏡花 (いずみきょうか) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 32 938 caractères · 67 écrans
「我ながら気味が悪かろうと言ったつもりなんで。……真夜中の事ですからね。――その窓際の机に向って署名となると、是非ここが気に成るように斜違に立てました。――帳面がございます。葬礼の控のように逆とじなどと言う悪はしてありませんから、何なら、初筆を一つ……」
「いや、いずれ。」
と云って、真三は立って覗いた。丸窓の小障子は外れていて、外に竹藪のある中に、ハアト形にどんよりと、あだ蒼い影が、ねばねばと、鱗形に溶けそうに脈を打って光っている。
「仕掛ものですよ。」
「蒟蒻。」
「いえ、生烏賊で。」
いきれにいきれて、腥く、暖くプンと臭って来る。おはぐろのともつれ合って、何とも言えない。……それで吐き戻したものがあった。――
床の間には、写で見て知っている、応挙の美女の幽霊が、おなじく写して掛っていた。これは、長崎の廓で、京から稚い時かどわかされた娘に、癆の死際に逢って、応挙があわれな面影を、ただそのままに写生したと言う伝説の添った絵なのである。目のきれの長い、まつげの濃い、下ぶくれの優しい顔が、かりそめに伝うる幽霊のように、脱落骨立などしているのでない。心もちほどは窶れたが卯の毛ほどの疵もなく、肩に乱れた黒髪をその卯の花の白く分けて、寂しそうにうっとりして、しごき帯の結びめの堆いのに、却って肌のかぼそさがあらわれて、乳