Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

Lisez 新書太閤記 (しんしょたいこうき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 186 659 caractères · 372 écrans

Aozora Bunko

というただ一語にすぎなかった。そして直ちに、措置を考え、あれこれと、名人の指が盤上へ、一石一石と打ち下ろすように、自室から、命令を出してはいたが、独りでいるその居室は、それ以外には、何の気配も咳の声もしなかった。

家康としては、これが、寿命の毒になるほどな、強い心の傷手であったことは、その、常にない容子でも察しられた。

さきに、上田城の真田昌幸が反いて、飼犬に手をかまれたような苦杯をなめたが、数正の離脱は、その比ではない。――まったく、自分の五体の一部と同様、死ぬまでは、離れるものではないと、思いこんでいた数正だったからである。

「……人間は信じられぬ」

元来、彼は、そうだったが、さらにその感を深うした。

ここにも、家康と秀吉と、二者の相違がある。家康は、信じられぬものは人間なりとし、終生、死後百年の計も、その思想に立脚している。秀吉は、正反対である。秀吉は、人間を信じ、人間に溺れた。――後、秀吉は、死ぬ間際には、この家康に、後事を頼んで死んだのである。

二つの世間は、この二人の主宰者の、性格的色彩にも、二つに塗り分けられていた。

――とまれ、数正の出奔は、家康が一生中の不祥事だったし、国中の大事件であった。