Classiques japonais avec furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Lisez 新書太閤記 (しんしょたいこうき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 192 758 caractères · 383 écrans
あとの城中は、空洞のような広さだった。その寂寞のうちには限られた血縁の人々と、かしずく少数の女人たちと、そして極く内輪の近臣しか残されていなかった。
――すると、奥の丸の橋廊下を、幾人もの幼な子を、その母なる人や侍女たちと共に両手をひいて、こなたへ渡って来る老人があった。光春の叔父で明智光廉入道長閑斎という、あの面白いひとであった。
「じじ様。みんなして、どこへ行くの」
光秀の末の子、乙寿丸は八つであった。こうして、奥の者が揃って局を出ることはめずらしいので、ふしぎそうに訊いていた。
「さあ、いずこへ行きましょう。嵯峨の花見か、竹生島へお舟で月見か」
このひとの常として、洒々落々と子供相手に戯れている容子は、きょうも平生と少しも変りがなかった。夫人や侍女や乳人たちは、さすがに、折々面をそむけて、そっと涙をふいていたが、長閑斎のことばを聞くと、涙の中でも、ふと笑ってしまうことがままある程であった。
もちろんここには左馬介光春の妻子もいる。その上に、亀山から光秀の妻子眷族までここへ引き取っていたので、ひと口に奥の者といっても、縁類を加えた老幼男女の数は何してもずいぶん大勢である。