Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

Lisez 新書太閤記 (しんしょたいこうき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 192 758 caractères · 383 écrans

Aozora Bunko

老母は音もなく立ってその姿を入口の端近くへ移した。

秀吉は蔀の下で、陣羽織の埃を払っていた。尼ヶ崎の陣中で剃ろした髪はまだそのまま陣頭巾につつんでいる。寧子は良人のうしろへ廻って、そっと、

「お母さまが、板敷までお迎えに出ていらっしゃいます」

と、小声で注意した。

秀吉はあわてて母の前へ寄ってひれ伏した。どうしたのか何もいうことができなくなっていた。やがてようやく洩らしたことばは、

「母上。御難儀をおかけいたしました。おゆるし下しおかれましょう」

という一語に過ぎなかった。

老母はすこし膝を退げた。入口まで立って出迎えた礼を、もういちど繰り返して、わが子に手をつかえるのであった。わが子とはいえ、この際の礼儀は、凱旋した家の主を迎えるのである。こうするのが武門の家風でもあった。つね日頃の単なる親子としてではない。

けれど秀吉は、ここに無事な母の姿を見たとたんに、つい骨肉の情愛それだけになって、老母の膝へ寄りかけたのである。しかし老母の恭謙な礼儀はそれをそっと拒むかのようにして、こういうのであった。

「お許様もつつがなく、まずはようお帰りなされた。……けれど、この母の難儀や無事を問う前に、なぜ、右大臣様(信長)の不慮をお語りなさらぬか。