Classiques japonais avec furigana
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あらじょたい
日本の文学 9 徳田秋声(一)
徳田 秋声
Lisez 日本の文学 9 徳田秋声(一) (あらじょたい) de 徳田 秋声 (とくだしゅうせい) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 346 393 caractères · 692 écrans
「ああ、何でもいいから速く身軽になりたい。」
お銀は曇んだような目を光らせながら、懶い体を持ちあぐんでいた。
笹村も、一度経験したことのある、お産の時のあの甘酸ッぱいような血腥いような臭気が、時々鼻を衝いて来るように思えてならなかった。
それにお銀の背後には、多少の金を懐にして田舎から出て来て、東京でまた妻子を一つに集めて暮そうとしている父親や弟がいた。お銀は夫婦きりでいる四畳半の自分の世界を離れると、じきにその渦の中へ引き込まれずにはいられなかった。お銀の頭には、一家離散の悲しみが深く染みついていた。
「すぐこの先の車屋の横町に、家が一軒あるんですがね。」
お銀はある日笹村に相談を持ちかけた。
お銀はそれまでに、時々曇る笹村の顔色を幾度も見せられた。
「それをとにかく借りることにしようと思うんですがどうでしょう。父はそこからどこかへ勤めるんだそうです。芳雄も、今いるところは暑苦しくてしようがないとかで、やはり通いにしたいと言っていますから、二人で稼げば、そんなにむずかしいことじゃないと思うんですがね。」
「それじゃお爺さんもこっちに永住か。」
「やれるかやれないか、まあそういうつもりなんでしょう。