Classiques japonais avec furigana
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あらじょたい
日本の文学 9 徳田秋声(一)
徳田 秋声
Lisez 日本の文学 9 徳田秋声(一) (あらじょたい) de 徳田 秋声 (とくだしゅうせい) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 346 393 caractères · 692 écrans
その間、笹村は子供を抱え出して、廊下をぶらぶらしていた。むずかしい病人がしきりに担ぎ込まれたり、死骸が運び出されたりした。ひところに比べると、そのころの病院の景気は何となく、だらけたものであった。死目になって張り詰めていた笹村の心にも、弛びと安易との淡い哀愁が漂っていた。廊下の突当りに、笹村の来ぬ前から痩せ細った十一、二の女の子を看護している婆さんだけが、今では笹村夫婦の一番古い馴染みであった。その病人は里流れになった子であった。たまにパナマの帽子を冠った実の父親が訪ねて来ても子供は何の親しみも感じなかった。
「可哀そうなもんですね。」
お銀は時々その部屋を見て来て、目を曇ませながら笹村に話した。
「家の坊やも、あなたの言うとおりに人にくれていたら、やっぱりあんなもんですよ。」お銀はそうも言っていた。
「母さんは……。」と言って、時々待ち遠しそうに顔を曇らしている正一を笹村は上草履のまま外へ抱え出した。
町には薄暗い雲の影がさしていた。笹村はそこから電車通りへ出て、橋袂の広場を見せて歩いた。そうしているうちに、お銀が風呂敷包みなどを抱えて、車で駈けつけて来た。