Classiques japonais avec furigana
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あらじょたい
日本の文学 9 徳田秋声(一)
徳田 秋声
Lisez 日本の文学 9 徳田秋声(一) (あらじょたい) de 徳田 秋声 (とくだしゅうせい) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 346 393 caractères · 692 écrans
時々高貴織りの羽織などを引っかけて川縁などを歩いているその姿を、お増は見かけていた。
「さようでございますね。」
お増は愛想らしく答えたが、よく男にでたらめな話の応答などの出来た以前の自分に比べると、こうした見知らぬ男などと口を利くのが不思議なほど億劫であった。
どの部屋もひっそりと寝静まった夜更に、お増の耳は時々雨続きで水嵩の増した川の瀬音に駭かされた。電気の光のあかあかと照り渡った東京の家の二階の寝間の様などが、目に映って来た。そこに友禅模様の肩当てをした夜着の襟から、口元などのきりりとした浅井が寝顔を出していた。階下に寝ているお今のつやつやした髪や、むっちりした白い手なども、幻のように浮んで来た。疲れた頭の皮一重が、時々うとうとと眠りに沈むかと思うと、川の瀬音が苦しい耳元へ、またうるさく寄せて来たり、隣室の男の骨張った姿が、有明けの灯影におそろしく見えたりした。
そこへ夜番の拍子木の音が、近づいて来た。
夜のあけるに間もないころに、お増は湯殿の方へ独り出て行った。まだ人影の見えない浴槽のなかには、刻々に満ちて来る湯の滴垂りばかりが耳について、温かい煙が、燈籠の影にもやもやしていた。