Classiques japonais avec furigana
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あらじょたい
日本の文学 9 徳田秋声(一)
徳田 秋声
Lisez 日本の文学 9 徳田秋声(一) (あらじょたい) de 徳田 秋声 (とくだしゅうせい) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 346 393 caractères · 692 écrans
」
「己もないな」
浅井も傍から、溜息をついた。
「あなたはあったじゃありませんか。先のお神さんの時に。」
「ううん。」浅井は薄笑いをしていた。
「見惚れていちゃいけませんよ。」
興奮したような浅井の目に、お増は気づきでもしたように、急いでそれを脱がした。
五十五
「どうも有難うございました。」
脱いだ着物をきちんと畳んで、元の通り紙をかけてしまってから、お今の帰って行ったあとで、夫婦は、何かもの足りないように甘いいらいらしさを心に感じた。そこには萌黄の布の被った箪笥のうえに新しい鏡台などが置かれてあった。
「お前もちょっと着てごらん。」
浅井はお今の長襦袢を畳むとき、お増に言いかけた。
「私? 私にこんな派手な物は似合やしませんよ。」
体の痩せぎすな、渋い好みのお増は、着物の上へちょっと袖を片方通しただけでじきに止めてしまった。
「若い時分から私はそうでしたよ。」
写真に遺っている、お増のその年ごろの生々しい姿が、浅井の目にも浮んで来た。勝気らしい口元のきりりと締った、下脹れの顔は、今よりもずっと色が白そうで、睫毛の長い冴えた目にも熱情があった。写真のお増は、たっぷりした髪を銀杏返しに結って、そのころ流行った白い帛を顎まで巻きつけて、コートを着ていた。