Classiques japonais avec furigana
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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
Lisez 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 167 285 caractères · 330 écrans
「おまえは、なかなか、いい案内者だ」
同じ動作を繰り返しながら、玄察はゆっくりと云った。
「あのとき、提灯を持って、駆けまわって、よく見えるように、みちしるべをしたな」
川口幾之助は蒼くなり、痩せた頬をひきつらせながら俯向いた。玄察はそれを見ないふりで、みちしるべはみごとだった、とゆっくり続けた。
「みごとだったが、案内はおまえの役目だからな、殿に申上げるまでもあるまい、私は申上げようとは思わない、船岡どのはもちろん他言する人ではない、せっかくいい案内をしてくれたのに、結果は思わしくなかったようだな、おまえはさぞ残念だろうが、まあ諦めるんだな」
そして、もうよし、と手を振った。
老女はけげんそうに聞いていたし、甲斐はまったく知らぬ顔をしていた。川口が去ってからも、玄察はいかにも腹がいえぬという眼つきで、「今夜は酔いつぶれてくれよう」などと云い、大盃を求めて乱暴に飲んだ。
一刻ほど飲んで、甲斐はさきに寝所へはいった。次ノ間は、村山、矢崎、辻村たちの宿直であった。甲斐は着替えをするときに、振返って久馬を見た。
「拝領のお垢付きで助かった」と甲斐は低い声で云った、「みごとな機転だった」