Classiques japonais avec furigana
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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
Lisez 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 167 285 caractères · 330 écrans
餌を取られたのだと思い、糸をあげると、なにか掛っている。ごみにでも引掛った感じなので、静かにひきよせると、水際まで来て、魚だということがわかった。
「それはこのくらいあった」と甲斐は釣竿を持っている手と、右手とで、三尺ほどの長さを宇乃に示した。
大きな鱗が、金と黒とで、まるで絵に描いたように、はっきりと見え、口の端には、これも絵のように、ひげが二つあった。甲斐は幼なかったが、それが鯉だということはすぐにわかったし、そんなに大きな鯉を見たのは初めてで、のぼせあがるほど昂奮した。鯉は水際まで来ていて、糸を口にくわえたまま、ゆったりと尾鰭を動かしていた。
幼ない甲斐は、その糸では釣りあげることができない、ということに気づき、糸の一端を流木の枝に巻きつけておいて、脇のほうから静かに川の中へはいっていった。
「手で捕るつもりでしたの」
「抱えあげるつもりだった」と甲斐は微笑した、「私は一と足、一と足と、近よっていった、鯉は水際にじっとしていた、そこは浅いので、水の上に背鰭が少し出て、それがゆらゆらと動いていた、からだはじっとしていて、背鰭だけが、ゆらゆらと動いている、私は大丈夫だと思った、それでも用心して近より、両手で鯉に抱きついた」