Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

もみノきはのこった

樅ノ木は残った

山本 周五郎

Lisez 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 167 285 caractères · 330 écrans

Aozora Bunko

さほどおくれずに追いつけると思う、と甲斐が云った。坂を下る途中で、今村善太夫らは松島へ向かい、甲斐と二人の供は、道をそれ、湯ノ原へとはいっていった。

そこは浅い谷間の湯治場で、宿は三軒あるが、二軒は自炊客だけの、掛け小屋同様のものであり、一軒だけは二階造りで、部屋数も三十ちかくあった。これは、伊達家の船蔵が松島湾の法師崎にあり、石巻街道の水主町には、水主たちが住んでいるし、家中の往来も少なくなかったから、それらのためにも、必要な設備がととのっていたのであった。

宿へ着いたのはまだ明るいじぶんで、甲斐はおくみの家にいるときの、「八十島主計」という名を名のった。

湯を浴びて、軽く食事をし、それから酒を命じた。甲斐は独りで飲んだ。喜兵衛と又之助は次の間にいて、酒や肴は又之助がはこんで来るが、用が済むとすぐにさがった。――甲斐は久方ぶりで、孤独と、もの侘しさを楽しんだ。二月といっても、みちのくは春がおそく、夜になると、まだ寒さはかなりきびしい。炭火のたっぷり熾った火桶、湯気を立てている、小さな茶釜。――古びて飴色に光っている柱や、煤けた障子や襖。行燈の光は暗くて、なにやら水墨の軸の掛っている床ノ間も、おぼろげにしか見えない。