Classiques japonais avec furigana
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ししゃのしょ
死者の書
折口 信夫
Lisez 死者の書 (ししゃのしょ) de 折口 信夫 (おりくちしのぶ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 62 340 caractères · 126 écrans
西空の棚雲の紫に輝く上で、落日は俄かに転き出した。その速さ。雲は炎になった。日は黄金の丸になって、その音も聞えるか、と思うほど鋭く廻った。雲の底から立ち昇る青い光りの風――、姫は、じっと見つめて居た。やがて、あらゆる光りは薄れて、雲は霽れた。夕闇の上に、目を疑うほど、鮮やかに見えた山の姿。二上山である。その二つの峰の間に、ありありと荘厳な人の俤が、瞬間顕れて消えた。後は、真暗な闇の空である。山の端も、雲も何もない方に、目を凝して、何時までも端坐して居た。郎女の心は、其時から愈々澄んだ。併し、極めて寂しくなり勝って行くばかりである。
ゆくりない日が、半年の後に再来て、姫の心を無上の歓喜に引き立てた。其は、同じ年の秋、彼岸中日の夕方であった。姫は、いつかの春の日のように、坐していた。朝から、姫の白い額の、故もなくひよめいた長い日の、後である。二上山の峰を包む雲の上に、中秋の日の爛熟した光りが、くるめき出したのである。雲は火となり、日は八尺の鏡と燃え、青い響きの吹雪を、吹き捲く嵐――。
雲がきれ、光りのしずまった山の端は細く金の外輪を靡かして居た。其時、男岳・女岳の峰の間に、ありありと浮き出た 髪 頭 肩 胸――。