Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

えどさんごくし

江戸三国志

吉川 英治

Lisez 江戸三国志 (えどさんごくし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 577 271 caractères · 1141 écrans

Aozora Bunko

「どうぞ、ごゆるりと」

率八が出て行こうとすると、

「おい」

「何か御用で?」

「面倒だろうが、あとで酒の支度をしておいてくれ。それと、ぬかりはなかろうが、納屋のまわりを時折見張っているようにな」

「よろしゅうございます。安心して、お話なさいまし」

どんと、戸を閉められると、納屋の中の光線は、わずかに明り取の切窓一つで、お蝶の絢爛も日本左衛門の姿も、程よく室内にぼかされて二人の気持も落着いて来る。

――まず何から話そうか。

彼と彼女の間に、或る心の経過があったとしても、茶屋町の四ツ目屋の帰りからずっと今日まで、彼が追えばのがれ、彼が迫れば蛇の如く忌んで逃げていたお蝶が、自分からここへ来てから真向きに坐る気持は、何としても、唐突で、にわかに言葉の緒口が見つからない。

が――そういう時には、女にはモジモジしているという受身の姿態が助けます。お蝶もそこで、娘らしい羞恥みを作って、男の言い出す声を待つばかりでした。

「…………」

けれど日本左衛門も暫くは無言で、彼女の襟脚を眺めながら、彼女の心を読もうとするものの如き眼ざしであります。

外では率八が、見張りの眼を光らしながら、酒の肴にしようとして、そこらの枯れ草で有合せの蛤でも焼いているものとみえ、明り取の窓からその煙と、こうばしい汐の焼ける匂いがぷんと流れて来る……。