Classiques japonais avec furigana
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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
Lisez 江戸三国志 (えどさんごくし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 577 271 caractères · 1141 écrans
ません。
そのくせ、彼方の紙漉小屋の附近では、何かわめき合う声も聞こえ、乱れ飛ぶ提灯の影もただ事ならず見えますのに――。
ちょうどその前後に、菖蒲河岸から浜町附近の露地を流して来た二人連れの虚無僧がある。
ちらと、笠の裡をのぞいた岡ッ引がそれを認めて、
「やっ、雲霧と四ツ目屋だ!」
折から張込んでいた捕方にそれを伝えたから堪りません。
彼方の納屋で合図があったら一度に動き出す手配をして、幾段にも構えている捕手の伏せ勢が、何気なくその危地へ懸って来た虚無僧の二人をつつんで、
「それッ」と、声を揚げてしまいました。
不意を衝たれてギョッとした虚無僧が、「何をッ」と天蓋をハネたのをきッかけにして、二本の白刃へ向って集まる十手の疾風が、まず紙漉場の裏あたりから凄まじい乱戟の渦紋を起こして、遂にそれから間もなく彼方の納屋の前で、釘勘がけたたましく吹いた呼子笛の音にも、手を分けて駈け向うことができなかったのであります。
驚いたのは、雲霧と四ツ目屋でしょう。
二人は、この遭難を偶然とは思いません。
江戸表へはいり込んで以来、偽普化僧の姿で、暫くうるさい岡ッ引の眼から離れたものと安心していた矢先ですから、当然、自分達を待ちうけて張られていた捕手の網と思ったらしく、自暴と狼狽と死に物狂いとで、寄りつく人数を滅茶苦茶に叩き斬ッ