Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

えどさんごくし

江戸三国志

吉川 英治

Lisez 江戸三国志 (えどさんごくし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 577 271 caractères · 1141 écrans

Aozora Bunko

盲目的な相愛のものまでには燃えてまいりません。

そのくせ、日本左衛門の悩ましそうな態度や、お蝶が、危険を冒して毎日訪ねてくる様子などを見ると、表面いかにも熾烈で、他愛のない睦言に過ごす半日の二人の仲には、どんな恋の飽満が醸されたかと思われるのですが、そうしつつ、恋は一歩もすすみません。

その矛盾は、夕方になると、二人の顔いろにあらわれます。

お蝶が来る――障子が閉まる――二人のささやきが甘そうにもれる――姿も見せないで半日が暮れる。そして、夕方が迫る。

こういう順序が、額風呂の離れへ来てからも、毎日判で押したようにつづきましたが、丁字風呂の二階に、ぽッと春の灯が橙色にともるころになりますと、お蝶も、日本左衛門も、期せずして酔のさめたようなひとみに変り、二人の心に冷やかな刃と刃が闘いはじめる。

燈火を嫌う妖精のように、離れへ行燈が運ばれると、その明りのはいる先に、丁字風呂の裏門をスウと帰ってゆくのはお蝶です。

「やっ? ……誰かこの袋戸に手をふれたな」

彼女が去るとすぐ後で、こう気がついて愕然とした日本左衛門が、そこの包みを解いてみると、夜ごとに使う黒衣の類は残されてありますが、その下に秘めておいた樟板の半分は何処にか失せて見当りません。