Classiques japonais avec furigana
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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
Lisez 江戸三国志 (えどさんごくし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 577 271 caractères · 1141 écrans
そこまで来ると、もう目の下に水が見えます。平河門、三の丸、丑寅櫓のこう三ツで、カギの手を作った内濠の水です。
「しめた!」
彼の心は叫んだでしょう。
初めてそこで、ヒラリと大地へ降りました。ちょうど梅林門の地先です。
土をふむが早いか、彼はさらに自由な足どりで、梅林櫓の芝土手へ向って疾風のごとく駆けだして行く。ただし、そこにはお手先番所と進物番の寝小屋がありますが、彼の目にはそんなものは、脱兎の前の枯れ草にも足りません。
番所の間を駆けぬけて、小松の植えられてある芝土手へかかると、夜光の短刀は咄嗟にかれのふところが呑む。
逃げて来た道は誤りません、およそ江戸城の十重二十重のかこみから出るにはここよりほかに逃げ口はない。なぜといえば、この梅林櫓の土手から水のかなたの竹橋御門の間にかぎッて、幅は広いが、濠は一重になっています。
が、しかし――彼がそこから躍ろうとしたせつなには、金吾もすでに、彼の姿をそこに見つけて、
「おのれ――ッ」
疾呼して日本左衛門を捕えました。
どぶ――ん……と凄まじい水煙を、暁闇濠の水面に見たのは、まさしくそうした途端であって、本丸の望楼に身伸びをして見つめていた吉宗と万太郎のひとみには、もうその影が二つとも、一沫の白いものとなって消えていました。