Classiques japonais avec furigana
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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
Lisez 江戸三国志 (えどさんごくし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 577 271 caractères · 1141 écrans
と――道は日蔭にはいったようです。すッくと高い榎の木が、そのやぶの陰を陰湿にして――
「あっ……」
と、突き当りそうになった大榎に顔を上げた二官は、そこで急に、来まじき所へ来たように足をすくめて、慌てて後へ戻りかけましたが、その微かな気配を、どこかで聞きとがめた者があるらしく、
「二官ッ!」
突然、呼び止めたかと思うと、かれが引ッ返そうとする足元を察して、なお鋭く、
「おうッ二官ッ。待て! 待て!」
うしろを見たら飛びついてきそうな叫びが、つづけざまに、榎の下の石牢からひびいて来ます。
呼び止めたのはヨハンです。石室の鉄窓にすがっている二ツの目です。
刺をふくんだヨハンのことばは、なお浴びせかけに二官の姿へ、
「人間の皮をかぶッた獣――なぜ待たないか」
と、手痛く罵りました。
「…………」
無言で振りかえった二官の面は真っ蒼です。そしてしばらくは、榎の日蔭の白眼とかれのひとみとが、ジッと視線に暗闘をからませているように見られました。
「二官、ここへ来い。いって聞かすことがある!」
権柄にこういいましたが、二官の体はゆるぎもせず、依然として、四、五間の距離を持堪えている。