Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

えどさんごくし

江戸三国志

吉川 英治

Lisez 江戸三国志 (えどさんごくし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 577 271 caractères · 1141 écrans

Aozora Bunko

「馬春堂殿、少々お話し申したいことがあるが、お目ざめでござるか」

と、声を作って、うかがいました。

「? ……」

どこかで鼠のようにガリガリ音をさせていた先生は、その声と、部屋の中へ流れ込んで来た夜風にギョッとしたものでしょう、しばらく返辞もありません。

明りがないので中は真ッ暗。

久米之丞もこれには少々戸惑いの形です。

相手を怖るるのではないが、下手に初太刀を誤ると始末がつかないことになるのは、彼の殺人の経験がしばしば教えているところなので、

「馬春堂殿、ちょッとこちらへ」

と、また呼んで、手元へ招き寄せようとする。

「? ……」

でも、先生は動かない。

どこにいるのかと思うと、袋戸棚の上段に潜ッている。そこから、天井板をめくッて、屋根裏へはい出そうという作業中であったと見えます。

果てしがないので久米之丞は、膝歩きにソロッと部屋の中へ進んで、相手の所在を見廻しましたが、まさか、戸棚の上とは気がつかない。

手さぐりで、机、床の間、ふとん、枕……。

と――そこが、藻抜けの殻なので、

「やや?」

と、いった途端に、背後へかくしていた大刀が、チカッと、暗の中に螢のような光を捩らせる。