Classiques japonais avec furigana
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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
Lisez 江戸三国志 (えどさんごくし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 577 271 caractères · 1141 écrans
自分がひそかに宿を取っていた、宿端れのわびしい安旅籠には、足の不自由な石尊詣りや、業病の願がけに来た老人や、また宿の家族にも子供や老婆などが多いのを思い起して、一樹の縁の人々の災難を、ジッと見ていられない気持でした。
と、息をきって、渡船場へ駆けつけて来るなり、向うへ渡る舟はないかと見廻しますに、それどころではない、ここは瀬がいいので、対岸の火中から逃げのびて来る人々が、荷物や女子供を舟に託して、われ先にと混み合ってくる一筋路。
火の子に泣く幼い者の声、何か高声でわめく男、荷物を流して身を忘れる女など――金吾は思わず目を覆いました。
所詮、空いている捨て舟などはないので、向うへ越えることは諦めねばなりませんが、その惨めな雑沓を見るや否、金吾は夢中で働いている。
どこの家族という見境なく、荷物や老人に手を貸して、夢中になって働き出している。
そのうちに、意気地のない悲鳴をあげて、二、三艘の小舟に乗って逃げて来た一組がありましたが、その葛籠や荷物がおそろしく嵩張っている上に、この騒ぎの中だというのに、ある者は金糸銀糸の衣裳を着、ある者は毛脛に白粉をなすりつけており、気をつけて見ると、一人も満足な形でありません。