Classiques japonais avec furigana
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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
Lisez 江戸三国志 (えどさんごくし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 577 271 caractères · 1141 écrans
「小仏越えの道は長え……」
と、呟く如くいいました。
無論、これなん日本左衛門と先生金右衛門の二人。
川越の宿や扇町屋あたりの噂から、わずかな手がかりを得て、ここに、ようやく迷路の人――切支丹尾敷のお蝶の行く姿をみとめ、今は心にも多少、余裕があるふうです。
日本左衛門はお蝶の生命をとるべく、また、久米之丞と月江とは、お蝶の手から鬼女の仮面を取り返すべく、ちょうど同じ小仏の麓、小仏の立場に宿を求めた晩――。
時刻にすればそれとは行きちがいに、夜半に向うその頃を、男も怖れをなす小仏越えに、ただ一人、足を向けてゆく不思議な女性がありました。
ここは、旅をするほどの者がたれも知るとおり、甲州街道の咽喉で、相州津久井県と武蔵の国の分水嶺でもあります。――小仏の名の起こるいわれは、俗説によると頂にある小さな石地蔵によるともいい、あるいは峰の大日堂にもとづくとも伝説されている。
峠の嶮しさ、幾曲りの道の気味わるさは、申すまでもありません。昼でさえ、巡礼の親子が殺されたの、侍が裸体になって降りて来たの、女の悲鳴を木魂に聞いたのという嫌な噂が、昔から小仏の山の名と何かの因縁を結んでいるように、この往来に絶えたことがない。