Classiques japonais avec furigana
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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
Lisez 江戸三国志 (えどさんごくし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 577 271 caractères · 1141 écrans
戸じまりを終えた婆さんが、カタコトと気永に何か晩飯のこしらえにかかっていると、最前聞こえた娘の声が、やはり障子を閉てたまま座敷のなかで、
「さっきお店に来た人が、何かいやな侍に逢ったと言っていましたが、何でしょうね?」
「こんな山の中だから、物騒な事は時々さ。だが、私のように、慾にも色にも縁の遠い人間になると、そりゃあ何処に住んでいても気楽なものだよ」
「羨ましゅうございますね」
「ところが、それじゃ生きている甲斐がない。やっぱり、お前さんぐらいな年頃で、世の中が怖いようでなければ困るよ。――その怖いのを押して、いいなずけの男の所へ行こうという、お前さん時代が私は恋しい」
柄にもない老嬢の述懐を聞いて、障子の中では、若い女がクスッと笑いを押さえたようです。
いや、或いは、それを笑ったのではなくて、自分がここに宿を借るため出たら目に言ったことばを、先が正直に信じているので可笑しくなったのかも知れません。
一方で晩の仕度が出来て、やっと、行燈という名ばかりの品物に、目の悪くなりそうな明りがボンヤリとつくと、女はへだての障子を開けて、
「では、おばさん。いろいろお世話になりましたけれど、これから峠を下りますから……。