Classiques japonais avec furigana
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ねこののみとりぶし
猫の蚤とり武士
国枝 史郎
Lisez 猫の蚤とり武士 (ねこののみとりぶし) de 国枝 史郎 (くにえだしろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 185 496 caractères · 368 écrans
「三十郎さんどうしたんだよ」
やがて梶子は笑いながら云った。
「お前さんらしくないじゃアないか。……思い込んだら是が非であろうと、想いをとげるのがお前さんの気象、それが中折れするなんて、少しヤキが廻ったねえ」
何んと大胆不敵のことか、暴力で体を穢されるのは、他人ではなくて自分だのに、人事かのようにそんなように云って、梶子は笑っているのであった。
「いやどうも、アッハッハッ」
三十郎は声に出して笑った。
「ほかのこととは事かわり、何んと申しても恋でござれば、いかな性急の三十郎も、そこまではどうも、そこまではどうも……」
「じゃア腕ずくは止めなのかい?」
「今のところは、止めでござります」
「いつになったら何をするのだえ?」
「気長くお待ちいたします」
「妾の心の靡くのを、気長く待とうというのだね」
「ざっとさようでございます」
「あたしにゃア一番迷惑さ」
「…………」
「あたしゃア人形の箱を持って、一日も早く京都へ行って……」
「やりませんな、京都へはやらぬ」
「といってこんな山の中に、いつまでもいられやアしないじゃアないか」
「わたくしとしましてはあなた様を靡かせ、女房にいたして江戸へ行き……」