Classiques japonais avec furigana
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ねこののみとりぶし
猫の蚤とり武士
国枝 史郎
Lisez 猫の蚤とり武士 (ねこののみとりぶし) de 国枝 史郎 (くにえだしろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 185 496 caractères · 368 écrans
「や、貴殿は」
と逃げて来た男と、蚤とり武士とがぶつかった時、蚤とり武士が仰天したように叫んだ。
「五十嵐殿! ……五十嵐右内殿!」
「やあ」
とその男も仰天したように云った。
「そういう貴殿は……鵜の丸兵庫殿かア――ッ」
「あいつらは? あいつらは? ……追い迫るあいつらは?」
「紀州の手の者! ……無念! 残念! ……見現わされて!」
「貴殿紀州より江戸入りしたと、内報あったれば町家武家屋敷等、今日までそれとなくお尋ねいたしたが……」
「無念! 紀伊殿また違約され、彼の地の同志ら一網打尽! ……」
「ナニ、同志が、一網打尽……」
「それらの事情お知らせしようと、江戸入りいたしたが紀州の藩士ら、付け廻し追い廻し捕えようと……そのため今日まで諸所に潜在……」
――が、追い迫った紀州藩士らが、この時二人を引っ包んだ。
「捕れ!」
「搦めろ!」
「逃がすな逃がすな!」
「鵜の丸殿オーッ」
と五十嵐右内は、薄痘痕の顔を月光に怒らせ、
「今はこれまで、斬って斬って!」
「斬り抜けましょうぞ」
と答えた瞬間、
「ワッ」
斃れたは紀州藩の武士で、月をさすように振り上げられたは、鵜の丸兵庫の血刀であった。