Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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しほんたいへいき

私本太平記(七)

吉川 英治

Lisez 私本太平記(七) (しほんたいへいき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 330 262 caractères · 662 écrans

Aozora Bunko

そこで尊氏も、

「いまは」

と、腹をきめ、全軍へ向って東上の令を出した。

四月末であり、舟艇、戦艦、すべて軍船の艤装をした大小五百余艘の船影は、その日、府中豊浦の海を出て行った。

これが着いた先は、周防の釜戸ノ関(現・上ノ関)で、尊氏はここから安芸の厳島神社へ代参の使い舟を派し、

五月一日

付けの願文を以て、武運の長久を祈っている。

すすんで、備後の尾ノ道に入港したのが、五月五日のひるだった。

「――男の節句」

と、尊氏は知っていた。

「酒酌もう。重五の祝いだ、土地の美酒を酌みながらさいごの軍議をとげようぞ」

おもなる大将をみなつれて、尾ノ道の山ぞい町からすぐ上の浄土寺へ休憩に入った。

浄土寺の僧、道謙は、

「これはまた……」

と、俄な申し入れにうろたえはしたが、しかし寺中をあげて、尊氏や直義以下のために、客殿を挙げ、この不時の珍客たちの憩いに供えた。

「住持は道謙と申さるるか」

直義が、あいさつを受け、また、こういった。

「――当所は古くから備後酒の名のあるところ、万葉にも吉備酒の歌さえみゆるの」

「は。御意で」

「何やらの書にも――ソノ味ハ醇厚、久シキヲ経テモ損セズ、故ニ古ヨリ大宋、南蛮ニ往来スル倭船モ、必ズココニテ酒壺ニ吉備酒ヲ満タシ、長キ船中ノ用ニ充ツ――とか。