Classiques japonais avec furigana
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どうひょう
道標
宮本 百合子
Lisez 道標 (どうひょう) de 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 846 457 caractères · 1672 écrans
話の中途から、伸子は半開きにした衣裳箪笥の扉のかげにかくれて、外出のできるなりに着かえはじめた。伸子たちは、その亡くなった子供には一度も会っていなかった。ただ、フォンテンブローにあずけられている上の子と、話にきいていただけだった。あのデュトの家で、あのおかっぱの須美子が、パリにいてさえ絶えることのないああいう姑たちへの気がねの間で、子供に死なれた様子を思うと、伸子はたえがたかった。蒼白く蝋のようにかたまった小さい死んだ赤坊の顔。とじられている瞼や鼻のまわりに、紫がかったかげがあった。黒い小さい口がすこしあいている。その顔は花に埋まっている。それは伸子が十七歳の初夏に死んだ赤坊の弟の死顔だった。消化不良と云われていた美しいその赤坊は、多計代が鏡台に向って髪を結っていた、そのうしろのほろ蚊帳のなかで、眠っているうちに息がとまっていたのだった。
「子供のことなんかでおさわがせしちゃわるいと思ったんですが、須美子がたっていうもんですから。――明日の朝、十時から葬式しますから、それだけでもお知らせして置こう、と思って」
「そりゃ、わたしには知らしてもらわなくちゃ!」