Classiques japonais avec furigana
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どうひょう
道標
宮本 百合子
Lisez 道標 (どうひょう) de 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 846 457 caractères · 1672 écrans
「さて、それじゃ伸子も来てくれたから、わたしはそろそろ出かけますよ」
泰造が、そう云ってベッドから立った。多計代は、椅子の上に足をのばしたまま、視線を泰造の動きにからませて、
「あなた、それで、何時ごろお帰りです?」
ときいた。
「早めに帰っていただかなけりゃ。豊原さんたちのお迎えが何時ごろ来るのか、わたしは伺っていませんよ」
「大丈夫だ、夕方までには帰ります」
泰造が控間で身じたくして出てゆくと、多計代は、
「さあ、あなたがたも出かけたらいいだろう」
不機嫌に窓ぎわに立っている和一郎に云った。伸子が日本にいたころの和一郎は、美術学校の最上級生だった。この春卒業して、父の事務所につとめはじめた。和一郎は、若い良人らしく大人びた。和一郎は、純白のカラーの上に、神経質な口元をむすんで、返事しない。
「だれもとめてやしないんだから、出かけたらいいじゃないか。小枝さんをごらんなさい。もうさっきからすっかり支度ができて、お待ちかねですよ」
多計代の云いかたには、小枝のために、伸子を苦しくさせる響きがあった。きかないふりをしている小枝の、おとなしい顔が、案の定こころもち赧らんだ。