Classiques japonais avec furigana
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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(十五)茶碗割り
野村 胡堂
Lisez 銭形平次捕物控(十五)茶碗割り (ぜにがたへいじとりものひかえ) de 野村 胡堂 (のむらこどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 109 804 caractères · 225 écrans
「行ってみよう」
平次とガラッ八は、伝通院前まで飛んだことは言うまでもありません。
成瀬屋は死の淵に崩れ落ちるような恐ろしい混乱でした。店は閉めたまま、奉公人たちは足音を忍ばせ、声を殺してただウロウロするばかり。奥では主人夫婦、倅、娘、お町の五人、枕を並べて唸っているのです。
一番重態なのは病弱なお町で、いちばん軽いのは主人の総右衛門、その口から平次はいろいろの事を引き出しました。
中毒したのは奥で食事を摂った五人だけ、奉公人たちは皆けろりとしておりますが、その中でたった一人、主人の弟の豊次郎が、何の異状もないのが人目につきます。
「私は店の用事で朝の食事が遅れました。これから始めようとすると、皆んな苦しみ始めたんで、これはいけないと思って止しましたよ」
そう聞けば何の変哲もありません。
集まった医者は三人。三人とも口を揃えて毒は裏庭に今を盛りと咲いている鳥兜の根を味噌汁へ摺り込んだものと分りましたが、誰がそんな事をしたのかとなると、まるで見当も付かないのです。
下女のお大は当面の責任者ですが、ただおろおろするばかり、裏の方へなにか入って来たので、味噌汁を仕掛けたまま一度見に行ったとは分りましたが、そのあいだお勝手に入って、鍋の中へ毒を仕込んだ者は誰かとなると、そこまでは分りません。