Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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ぜにがたへいじとりものひかえ

鬼の面 ――銭形平次傑作選3

野村 胡堂

Lisez 鬼の面 ――銭形平次傑作選3 (ぜにがたへいじとりものひかえ) de 野村 胡堂 (のむらこどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 28 312 caractères · 57 écrans

Aozora Bunko

銭形平次捕物控

一

一

「親分、良い陽気ですね」

フラリとやって来た八五郎は、襟の汗を拭いて、お先煙草を五六服、お茶をガブ呑みの、継穂もないお世辞を言うのでした。

「二三日見えなかったが、どこへ行って居たんだ」

銭形の平次も、この十日ばかりはまるっきり暇、植木の世話をしたり、物の本を読み返したり蟻の行列を眺めたり、雲のたたずまいを考えたり、まことに退屈な日を送って居たのです。

「こんなとき家の中に引籠っているのは、余っぽど銭のねえ奴か、女房に惚れている野郎ばかりで」

こんな事をヌケヌケ言う八五郎を、平次はニヤリニヤリと受けました。

「当てられたようだが、――それに引換えてお前は余っぽど景気が良いと見えるな」

「何しろ、お天気がよくて、身体が達者で、お小遣がふんだんにあるんだから、半日だって叔母さんの二階に燻ぶっちゃ居られませんよ。外へ出たとたんに、江戸中の新造が、皆んなあっしに惚れて居るような気がするでしょう」

「江戸中の新造は大きいな、――ところで何処へ行ったんだ」

「神楽坂ですよ」

「妙なところへ行ったものだね、そこに良い新造でも居るのか」

「良い新造もいますが、色っぽい年増も、浪人も、金持も居ましたよ」