Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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ぜにがたへいじとりものひかえ

鬼の面 ――銭形平次傑作選3

野村 胡堂

Lisez 鬼の面 ――銭形平次傑作選3 (ぜにがたへいじとりものひかえ) de 野村 胡堂 (のむらこどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 28 312 caractères · 57 écrans

Aozora Bunko

径一尺の鍋蓋は霰のような平次の投げ銭を音もなく払い落しました。平次の特技も面積のある蓋を巧みに使われては、全く役に立ちません。

「親分、銭は?」

八五郎が裏口から飛込んで声を掛けたのも無理のないことでした。平次の手からはもう銭が飛出さず、唯一の武器も、まったく尽きてしまったのです。

「八、この上は十手だ、よいか」

十手を逆手に、一歩飛込む平次、後ろからは八五郎が、これも命がけで踏込もうとしております。

「平次、気の毒だがもう銭が尽きたのか、鍋蓋の極意、面白かったのう、――さア、この上は一刀両断だ、来いッ」

岡浪之進、得意の鍋蓋をポンと捨てると、一刀を振り冠って、近々と平次に迫ります。平次がどんなに器用に十手を使ったところで、一流の名手の刀は受けきれません。

「何をッ」

「それ行くぞッ」

その間はまさに六尺、一躍すると、浪之進の一刀は平次を両断にするか、少なくとも致命的な手を負わせたことでしょう。が、このとき、奇蹟が起りました。

「これでも喰えッ」

パッと上げた平次の手からは、和蘭の銀貨が流星の如く飛んで、岡浪之進の額を打ったのです。

「己れッ」

たじろぐ浪之進、額からはタラタラと血が流れました。