Classiques japonais avec furigana
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まじゅつし
魔術師
江戸川 乱歩
Lisez 魔術師 (まじゅつし) de 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 139 264 caractères · 280 écrans
「ヘイ、一人も。みんな楽屋の方へ逃げました」
その男が奇術師一行と関係のないことは、一見して分った。道具方の一同はその小屋に附属しているのだ。
舞台には奇術に使用する、黒天鵞絨張りの大きな箱が据えられ、その下の床板には夥しい血液の跡。これ程の血のりを、仕掛けの赤インキと信じていたにもせよ、見物も道具方も、何の疑う所もなかったのは、賊の所業が人間の想像力の桁をはずれて、余りにもずば抜けていたからに相違ない。
明智は念の為に、そこにある天鵞絨張りの奇術道具の箱を開いて見たが、中は空っぽだ。まさかそんな所へ隠れる筈はない。
彼は道具方を案内役にして舞台裏に引返した。大道具の立並んだ間を通り過ぎて、奈落の入口へ来ると、別の道具方が待受けていて、囁き声で報告した。
「あっちへ逃げましたぜ。ホラ、あの手品の道具の積んである所です」
広い舞台裏の一隅に、旧劇用の駕籠だとか、張りぼての手水鉢だとか、はげちょろの大木の幹などと一緒に、奇術用の大道具小道具が、天鵞絨や金糸銀糸の房飾り毒々しく、雑然と置き並べてある。舞台裏全体にたった一つ、高い天井から電燈がぶら下っているばかりだから、そのゴタゴタした隅っこは、殆ど暗闇も同然、屈強の隠れ場所だ。