Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

なるとひちょう

鳴門秘帖(三)

吉川 英治

Lisez 鳴門秘帖(三) (なるとひちょう) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 261 216 caractères · 521 écrans

Aozora Bunko

女は、体じゅうを心臓にして動悸をうった。

そこのさびしい木蔭が、恐ろしいようなまたうれしいような。

「お米」

と怖いように射る眼ざし、

「いまの言葉に、よも偽りはあるまいな」

と、念を押して締めつける言葉が、かの女をいっそう熱ッぽく必死にさせて、

「何で嘘や偽りにこんなことがいえましょう。まだそれ程にお疑いなら、見ている前で、私は死んで見せます、ええ、今すぐにでも」

「では、真実、それほどまでにこの弦之丞を」

「思いつめておりました!」と、お米の姿態が白肌の蛇のように男の胸へからみついて、

「ですけれど、その懸命は私ばかり、あなたのほうでは、なんとも思ってはいらっしゃらない」

怨みがましく向ける目の針を避けて、

「いや」

面をそむけた。

偽りは自分にある。かれは、お米をあざむき、己れの心をいつわる舌に重い苦渋をおぼえながら、

「何を隠そう、そうした心は拙者とても同じであった。川長の離れ座敷で、銀五郎や多市などとともに、そちに匿われていた頃から」

「ええっ、もし、それはほんとでございますか」

「きょうまで忘れたことがない」

と、強く細い手くびをつかんだが、体はお米の粘りを解いて、抜けるように胸を離れた。