Classiques japonais avec furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(三)
吉川 英治
Lisez 鳴門秘帖(三) (なるとひちょう) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 261 216 caractères · 521 écrans
あのこととは、無論お綱の心の奥に、言いだせずに秘められている、恋である。
だが、弦之丞には、すでに、愛人として、お千絵様という者がある。それを知っている万吉の立場では、いかにお綱の心を汲んでも、弦之丞へ向って、今日まで、どうもその二重の恋を取次ぎにくかった。
だから。
今夜は狭い小舟の苫、わたしもいないし、人目もなし、ちょうどいい水明りに、ちょうどいいこの折に。
「あの約束をネ」
と、万吉が、いったのである。
打ち明けてごらんなさい、と粋をきかして、目知らせしたのだ。
そこで万吉は、堤を上がると土橋を渡って、スタスタと、宰相山の木立を目あてに、そこから遠からぬ桃谷の自分の家へ急いで行った。
この大阪表へ来て以来、阿波の原士や例の三人組が、手分けをして自分たちの居所を探しているという風聞なので、その詮索の目をのがれるため、弦之丞、お綱、万吉の三人は、ひそかにこの過書舟の苫をかぶって、浮草のような幾日を過ごしていた。
そして、一方には、阿州屋敷の動静をさぐり、かねては、阿波へ渡るべき、好機会を狙っている。
ある日は、終日舟から上がらぬこともあるので、それに要る手廻りの品は、いつか、万吉が真夜中に自分の家を叩いて、お吉に、そッと運ばせたものである。