Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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ロザリオのくさり

ロザリオの鎖

永井 隆

Leggi ロザリオの鎖 (ロザリオのくさり) di 永井 隆 (ながいたかし) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 107.351 caratteri · 213 schermate

Aozora Bunko

義理の母をもたせたくないからである。この子のもっている「お母さん」をにごしたくないからである。

私は二人の子にのこす遺産を何も持っておらぬ。私が行ってしまうと、二人の子はただ親の思い出を持つだけである。つまり私と妻とは二人の子に「思い出」だけを残して世を去ることになる。それゆえ、せめてこの思い出を美しきものとして残したい。ゆかしい思い出、きよらかな思い出──一人の父と一人の母──純粋な両親の思い出!

「お母さん!」──これはこの子の小さな胸に秘めた宝玉である。たった一つ、汚れなく光っている玉である。「お母さん」とそっと呼んでみる、するとほのぼのと浮かぶただ一つの面影! それは一生消えることのない尊い面影である。

もし私がふたたび妻を迎えたならば、この子はその女に向かって「お母さん」と呼ばねばならぬ。もしこの子を養女にやれば、その家の主婦を「お母さん」と呼ばねばならぬ、そうなっては、この子のまぶたに、お母さんと呼んだときに現われる面影は二重写しとなり、真の母はすでに亡き人ゆえうすれてしまう、そして「お母さん」という宝玉の値打ちが下がるであろう。

私は亡き妻を思うとき、私の妻としては平凡な女だったぐらいにしか考えないが、この子の母として思うと、私の手を勝手に触れてはならぬ尊い存在であった。