Classici giapponesi con furigana
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ロザリオのくさり
ロザリオの鎖
永井 隆
Leggi ロザリオの鎖 (ロザリオのくさり) di 永井 隆 (ながいたかし) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 107.351 caratteri · 213 schermate
に走らない下駄ばきの老医などを思った。あの人々の骨がここに月光にさらされている。思い出にふけりながら歩みを進めると、両側のすすり泣きはいよいよ哀切をきわめる。あの色の白い娘は葉書をかぞえながら潰れたのかもしれない。あの大男はあの大事なシェパードを身をもってかばって死んだであろう。あの娘はピアノの弦の断ち切られる音をかすかに聞いたかしら、あの老先生は救護班詰所へ出勤せねばならぬとあせりつつ火にまかれたにちがいない……
港から吹きつけていた風がぱったりやんだ。私のほほがにわかに温かくなった。背すじもぽかぽかして、私はなんとなく落ち着いた。そして立ち止まってふたたびあたりを見直した。しらじらと月が瓦の原を照らしている。すすり泣きはぴたりとやんでいた。
私は瓦の原っぱに踏みこんでいった。何もない。何の声も起こらぬ。それではあのすすり泣きは心の迷いであったろうか?──ふたたび港から風が吹きつけてきた。ここは丘の上だから風は切線の方向に吹きぬける。ヒイーッ、ヒイーッ、すすり泣きはふたたび足もといちめんに起こった。私は身をかがめた。
瓦が泣いているのだった。瓦が積み重なって乱れていると、狭いすき間がいくらもできる。