Classici giapponesi con furigana
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たんげさぜん
丹下左膳
林 不忘
Leggi 丹下左膳 (たんげさぜん) di 林 不忘 (はやしふぼう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 340.187 caratteri · 666 schermate
ほほえみと泪。
すり足で退出するお城廊下の長かったことよ。
あの日、大役をお受けしてからこのかた。
南町奉行としての自分は、はたして何をし、そして、なにを知ったか?
思えば、風も吹き、雨も降った。が、いますべてを識りつくしたあとに、たった一つ残っている大きな謎。
それは、人間である。
人のこころの底の底まで温く知りぬいて、善玉悪玉を一眼見わけるおっかない大岡様。
たいがいの悪がじろりと一瞥を食っただけで、思わずお白洲の砂をつかむと言われている古今に絶した凄いすごいお奉行さまにも、煎じつめれば、この世はやはりなみだと微笑のほか何ものでもなかった……かも知れない。
夢。
――という気が、忠相はしみじみとするのだった。
で、うっとりした眼をそばの泰軒へ向けると、会話のないのにあいたのか、いつのまにやらごろりと横になった蒲生泰軒、徳利に頭をのせてはや軽い寝息を聞かせている。
ばっさりと倒れた髪。なかば開いた口。
強いようでも、流浪によごれた寝顔はどこかやつれて悲しかった。
「疲れたろうな。寝ろ寝ろ」
とひとり口の中でつぶやいた忠相は、急に何ごとか思いついたらしくすばやく手文庫を探った。